猫目線で心地よく暮らす vol.9「猫の爪研ぎ」

2021/03/29

 

ネコ科動物の大きな特徴として、専用の筋肉と腱があり、爪を出し入れすることができます。この動きができる動物はそれほど多くありません。これにより必要がない時は爪をしまい、ナイフのように尖った状態に保つことができます。猫の爪は人間のように1枚ではなく、何層にも重なりながら伸びていき、爪を研ぐことで古くなった層は剥がれ落ち、切れ味を取り戻します。

猫にとっての爪研ぎ

猫にとって爪研ぎは2つの意味があります。1つは単純に高い殺傷能力を維持するためであり、2つめはマーキングです。マーキングには爪と肉球のフェロモンを付ける嗅覚標識と、爪を研いだ痕跡と、剥がれた爪を放置しておく視覚標識の2種類があります。猫が1箇所でなく、家に至るところで爪研ぎをするのは自分の家であるとアピールするためです。それ以外には体のストレッチやストレス解消でガリガリと力強く研ぐこともあります。

このように猫にとって爪研ぎ行為は本能的な行動であり、1日のルーティーンの1つです。一方で私たちにとっては建物や家財が破壊されると困ってしまいます。ある程度許容する必要がありますが、賃貸住宅だったり、思い入れのあるソファだったりが破壊されると、経済的にも精神的にもダメージがあるので、できれば所定の位置で爪を研いで欲しいものです。

猫の爪研ぎから家を守るには

建物や家財を猫の爪研ぎから守るにはどうすれば良いでしょうか。最も簡単な方法は、今、爪を研いでしまう場所に、そのまま爪研ぎグッズを設置することです。貼るタイプの爪研ぎが難しい場合は、爪研ぎがわりになるキャットタワーなどを置くと良いでしょう。

一方で、爪研ぎをしてほしくない場所には邪魔になるものを設置して「研ぎ心地」を下げましょう。例えば家の柱であれば、近くに観葉植物(猫に毒性がないことを確認してください)置いたり、ソファであれば滑る素材のカバーでおおったりすると良いでしょう。

よく聞く方法に、猫が嫌がる臭いをつける方法がありますが、個人的にはあまりおすすめしていません。上記のように爪研ぎはマーキングとしても重要なため、自分の匂いがかき消されるとストレスを感じて、むしろマーキング行動が強くなる可能性があるからです。

まとめ

病院でも採血などは許容する猫でも爪を切ろうとすると必死に抵抗することがあります。それほど猫にとって爪は大切で繊細なものなのでしょう。猫が爪を研ぐ行為は、猫のルーティーンの1つであり、完全に止めることはできません。以前は爪を取ってしまう抜爪手術もありましたが、現在では倫理的な面からほとんど実施されていません。人間側が工夫することで、お互いストレスがない場所で爪を研いでもらうことは可能です。こちら側の都合ではなく、猫の希望に沿って、爪研ぎの道具や場所を設置するのがポイントです。

参考資料

・Beaver, Bonnie V. Feline Behavior-E-Book. Elsevier Health Sciences, 2003

山本宗伸 / やまもと そうしん

Tokyo Cat Specialists 院長

日本大学獣医学科外科学研究室卒。東京都出身。授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫に魅了され、獣医学の道に進む。獣医学生時代から猫医学の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。国際猫医学会ISFM、日本猫医学会JSFM所属。

http://tokyocatspecialists.jp/