猫目線で心地よく暮らす vol.5「猫の睡眠」

2020/11/06

 

人の健康を語る上で睡眠は避けられないテーマですが、猫においてはどうでしょう。「よく寝る子」が語源ともいわれている猫ですが、猫の睡眠時間は1日12〜20時間、平均16時間ほどです。つまり人間の2倍、1日の2/3の以上を睡眠に当てている計算になります。

動物の睡眠時間の長さは食生活と、体のサイズに一定の傾向があります。まず肉食動物はカロリーの高い食事を短時間に摂取することができ、また他の動物から襲われる心配が少ないため睡眠時間が長い傾向にあります。一方で草食動物はカロリーの低い草を大量に食べる必要があり、食事に多くの時間を割きます。さらに襲われる危険性があるため、長時間寝ていられません。体のサイズにおいては小さい動物の方が睡眠時間は長くなります。小さな動物は草食獣でも身を隠すことができるので、ウサギなどは10時間以上睡眠をとります。一方で大きな草食獣の牛は4時間ほど、キリンは2時間しか睡眠をとりません。猫は2つともの条件を満たしているため、非常に長い睡眠を取る動物になったのでしょう。

人間の睡眠は「質」について言及されること多いですが、猫ではどうでしょう。猫の睡眠中の脳波を調べた研究はいくつかあり、猫でもレム睡眠、ノンレム睡眠の脳波が検出されています。人間ではレム-ノンレムのサイクルが90分ほどですが、猫では22分と報告されており、かなり短い周期であることがわかります。猫は人間のようにまとめ寝るのではなく、小さい眠りを繰り返しているからです。睡眠障害や眠りが浅いという症状は猫の医療に置いて問題になることはあまりなく、また教科書的にも睡眠の質について扱われている参考書は見たことがありません。ただ、自律神経の病気やストレス環境下では、猫も睡眠に関してのトラブルを抱えているかもしれません。

猫にとって適した睡眠環境を考えてみると、一部は人と一致しますが、異なる点もあります。まず静かで暖かいところは睡眠がとりやすい点は一致します。一方で高い場所で寝るというのは猫の特徴でしょう。人間は高いところは緊張してしまいますが、猫とっては高い場所=安全という認識なので、あえて他の動物が上がれない場所に登って睡眠をとる傾向にあります。また光度という点でも、人間ほどは気にしていないようです。猫は朝方と夕方が狩猟の時間のため、夜間と日中を睡眠に当てているからでしょう。ただ、あまりに明るすぎる環境では人間のように顔を体に埋めたり、手を目の上に置いたりして光をシャットアウトします。

まとめ

猫にとっても睡眠は非常に大事なものであることは間違い無いでしょう。診察中でも初めて猫を飼う方に、準備するもの5個の1つとして睡眠場所の確保とアドバイスしています(他の4個は:食事、水飲み場、トイレ、そして一緒に遊ぶなどソーシャルな場)。睡眠で悩む猫はそれほど多くないですが、お気に入りの場所は各々の猫に用意してあげましょう。またある研究では心疾患を抱える猫の方が睡眠中の呼吸数が多く、成猫で1分あたり30回を超える場合は精査した方が良いと報告しています。中には一時的に浅い呼吸を繰り返し30回を超えることもありますが、複数回測定して毎回30回以上の場合は、見た目上元気でも一度かかりつけの獣医師に相談すると良いでしょう。

 

参考資料

Steriade, Mircea M., and Robert W. McCarley. Brainstem control of wakefulness and sleep. Springer Science & Business Media, 2013.

Ljungvall, Ingrid, et al. “Sleeping and resting respiratory rates in healthy adult cats and cats with subclinical heart disease.” Journal of feline medicine and surgery 16.4 (2014): 281-290.

山本宗伸 / やまもと そうしん

Tokyo Cat Specialists 院長

日本大学獣医学科外科学研究室卒。東京都出身。授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫に魅了され、獣医学の道に進む。獣医学生時代から猫医学の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。国際猫医学会ISFM、日本猫医学会JSFM所属。

http://tokyocatspecialists.jp/