猫目線で心地よく暮らす vol.4「猫の運動」

猫目線で心地よく暮らす vol.4「猫の運動」

動物の中でも猫の運動能力はかなり優れている部類に入ります。猫は狩猟動物なので、追う側であることも理由の1つでしょう。猫の代表的な優れた能力がジャンプ力です。後肢の力は体重の4倍の力を発揮し、体重や年齢にもよりますが、垂直跳びで170cmほどは跳べると記録されています。さらに空中挙動にも優れているため、壁を蹴ってさらに高いところに登ることもできます。

 猫は逆さまに落ちても空中で姿勢を戻すことができますが、この反射は生後40日頃にはもう完成しています。この反応は0.4秒もあれば完全な着地姿勢を取れます。0.4秒間の落下を高さにすると約1.5mですので、いかに早く猫が姿勢を戻すことができるかわかります。ちなみに走る速度は最大48km/hと記録されています。この最高速度は人間よりも速いですが、持続することはできません。

 それ以外に猫が得意な運動というと木登りです。おなじネコ科であるライオンやジャガーも木を上ることができ、ある程度の体格で木を上ることができる動物はそれほど多くありません。これは前肢の肩の可動域が広いことが理由の1つです。犬や馬は腕を前後に動かすことはできますが、抱きつくような動きはできません。一方猫は、猫パンチに代表されるようなフックパンチのように内側に腕を回す動きをとてもスムーズにできます。優れたバランス感覚に加えて、この器用な前足で気に抱きつき、小さな溝を使い木登りが可能になります。

反対に猫が苦手なことといえば泳ぎです。実際には猫もいわゆる”犬かき”のような動きで水面を移動することはできますが、濡れることを嫌うため水に入れるとびっくりして逃げてしまうことがほとんどです。例外的にトルコのターキッシュ・バンという猫種は、泳ぐのが得意な猫であると知られています。これは湖や川の近くで育った猫は水を恐れないからだと考えられています。

まとめ

猫の運動能力を数字でみると、より実感できるのではないでしょうか。猫を飼ううえで少し大変なのは、スペースを区切れないことです。犬であればベビーゲートのような柵でキッチンに入らないようにしたり、危険なものは高いところに置いたりできますが、猫には無効です。ある程度キッチンには侵入するものと考え、ゴミ箱のフタがしっかりしまるようにしたり、危険なものは扉付きの収納に入れるなどして対策しましょう。

運動させるという意味では、地上だけでなく垂直方向の動きを取り入れるとより猫は嬉しいでしょう。ただ長い時間遊ぶ集中力も体力もないので、10分など短期で大丈夫です。また猫の得意なジャンプを日頃からできるよう台などを用意してあげましょう。キャットタワーは登らないかも?と心配されることが多いですが、実際には私たちの予想以上に気に入ってくれることが殆どです。

参考資料

Beaver, Bonnie V. Feline Behavior-E-Book. Elsevier Health Sciences, 2003.

 

山本宗伸 / やまもと そうしん

Tokyo Cat Specialists 院長

日本大学獣医学科外科学研究室卒。東京都出身。授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫に魅了され、獣医学の道に進む。獣医学生時代から猫医学の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。国際猫医学会ISFM、日本猫医学会JSFM所属。

https://tokyocatspecialists.jp/

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